#6 北上川沿い

朝8時すぎ。今日の盛岡。

日差しだけなら暖か。バスがなかなか来なくて、隣に立っていたおばさまと「こないですね」と立ち話。

雪の日は仕方ないわよねえ、なんて話して、一瞬、同士のような気持ちが芽生えたのもつかの間。実は目指す行き先は違ったよう。私が乗るバスが先に到着。

「おさきに」「はい、またねえ」

袖触れ合うも縁、バス共に待つも縁。

昼過ぎ、外に出ると歩道が消えていた。

寒くても、痛くても、自分の足で歩くことは楽しい。

太ももの関節と筋肉がぐんぐんと動く。

縮こまると余計寒いので、少し胸を張って。

イヤホンから流れる音楽を背景に、リュックの中でカタンカタンと音をたてるペンケースをリズムに、寒い日の雪特有のむぎゅむぎゅとした可愛い音をアクセントに。

昨年自転車を買ってから、どこへでも自転車で出かけるようになった。車に比べたら寒いし暑いし、雨だと濡れるし、時間かかるし、不便といえば不便だ。

でも自転車がすきだ。香り始めた季節の花にも気付ける。知り合いとすれ違ったら、自転車を止めてちょっと話ができる。坂道をすいーーっと下る時の、ブレーキをかけようかどうしようか、いや、このまま!すいーーーっといく!!みたいな小さな自分への鼓舞。

ペダルを踏んで、その分進む。

そういう、着実に、自分の力で前に行くことが昨年の私には必要だったのかも。

ふしぎだなあ。岩手で車がなければ生きていけない、と思っていたのに、自転車に乗りはじめて。自転車がなかったら絶対困る、って思っていたのに、今は一人、てくてく歩いている。

「わたしにはこれがなければ」と思うことほど、手放した先には新しい世界が開けるのかもしれない。

1時間ほど歩いたら、髪の毛の根っこまでヒヤーと冷たくなった。

ガードレールにみつけたチューリップと自転車を横目に、カタンカタンむぎゅむぎゅと。

今日もLITERSに来ていただき、ありがとうございます。

盛岡に、また冬が来た。今年は行ったり来たりいそがしいね。今度はどのくらい滞在するのかな。

目次