書くこと、のお手伝い

「書くことを、もっとしたい。手伝ってもらえないですか?」

仕事の打ち合わせの最後に、お世話になっている方が言った。
なるほど、本を出したいということですか? と、私が聞き返すと、「んー、そうではないんです。」

「仕事でも書くことはずっとしているんだけど、出版したいとかそういうことではないの。今までたくさんの人と話して感じたこと、これからの私が出会うこと、言葉にして、残しておきたいなと思って。私が死ぬまでのあいだね、書いていきたい、本の形にしてもいいけど、たくさんじゃなくていい。手紙みたいに、『私がみたあのときのあなたは、こんな話をしていた、こんなふうに見えた』というのが届いたらいい。」

言葉も編集も、もろもろ勉強中の私には務まりきらない、本を出版したい、と言われたらお断りしよう(他の適任の方を紹介しよう)と思っていた。

だけど、目の前でゆっくりと言葉を紡ぐその声を受け取っているうちに、ずっと前、私と同じように向き合ってこの声を受け取ったであろうだれかに、また「あのとき」を届けられる、今度は書き言葉で、というのは、とってもいいなと思った。

週にひとつ、日記よりも長い文章を書いてもらって、一ヶ月に一度それを一緒に読ませてもらう、から始めましょう、と話して、打ち合わせは終わり。

外に出たら、強い風。でもとても嬉しい気持ち。

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